学校のこと
携帯に表示された数字を見て、俺はその日の遅刻を確信した。頑張れば一限目には間に合ったかもしれないけど、もうその時俺の頭の中のハンドルは完全に休む方向にきられていた。
———休もう。
こう考えるまで、2秒かからなかった。
どうせ遅刻するし、それなら寧ろ休む。これが何を意味するのか?そう、俺の人生そのものです。
どうせいつか散らかるから部屋掃除するのやめよう、とか。挙げ句の果てには「どうせ死ぬしなぁ」とかいって何もかも面倒になることだってしょっちゅうある。そうだよどうせ死ぬんだよ俺たち。それなのに日々の生活を頑張れる人、まじで尊敬するよ。凄い。
もちろんだが、学校を欠席するにはそれなりの理由がいる。なんか気が乗らなかったんで、みたいな、そんなt.A.T.u.みたいな理由で学校は休めない。
そうなって来るともう仮病しかない。仮病といっても種類は色々ある。俺はあらゆる病状の中でも、スタンダードかつトップクラスの汎用性の高さを誇る頭痛を選択した。
ここで、母に学校を休む旨を伝えるべく一階に降りた。因みに親は共働きになるので、家には誰も居なくなる。俺としてはもはや休まない理由の方が見当たらない。
「お母さん今日頭痛いから学校休むわ」
「熱計りなさい」
ごもっともです。いやそうじゃないんだよお母さん。熱なんてあるわけないじゃん、仮病だもん。それで熱計って普通に平熱で
「あ、ごめんやっぱり気のせいだった、行ってきまーす」
ってか。アホか。熱なんて計るわけねぇだろ。
「いやほら俺最近寝不足だったじゃん、塾とか結構行くようになったし。ね?ほらあとなんか最近朝ごはん食べれてないじゃん、あれがマジでデカイと思うんだよ。なんかほんとに食欲湧かなくなって、あと」
「じゃあもう休みなさい」
あっさり。あっさり終わったわ。多分お母さんも仕事の準備に追われて俺の対応が面倒くさくなったんだろう。母はその後足早に家を出ていった。
親が居なくなって、俺はすぐ横になった。
とりあえずYouTubeをぼんやり眺めてたけど、割とすぐに飽きた。
ふと時計を見た。
学校だと、昼休みが始まっているころだ。今頃みんなは楽しく友達とご飯を食べて、ゲームをしたり騒いだりしてるんだろう。勿論俺の机と椅子は誰かに占領されてて。
俺のことを心配する奴は誰も居ないんだろうな。
いつも1人で飯食ってるし。移動教室も個人行動極めちゃってるし。それが寂しいと思ったことは一度もないけど、事実として目の前に突きつけられると、これでいいのかな、と思う。
もっと人と話した方がいいんじゃないかな。俺にとって人との会話はあまり楽しいものではないけど。それでもこのまま大人になっていくことに多少の恐れも抱かない訳でもないし。
その日は結局オナニーして、ミュージックビデオを漁ってたら親が帰ってきた。希崎ジェシカのおっぱいは本当にそそられるものがあった。ああいうのを美乳っていうんだよ、こじはるなんて話にならんよ。
やっぱり俺のことを心配してラインしてくれる人なんていなかった。まあ確かにクラスの地味な女の子が休んだところで立場を変えればそらそうか、なんてごく当たり前のことを認識した。
とりあえず、明日の部活はサボらずにいこうかなって、思った。俺に関係ない会話でも、独りでいるよりは知ってる人が楽しそうに話してるのを聞いてる方が、まだ気持ちは楽だ。
そういう気持ちを保ち続けてるだけ、俺の人生まだマシかなと。そんな根拠のない希望の党みたいな希望を持ちながら、俺は何となく明日を待ってます。